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判決 
 
東京地方裁判所


令和4年10月13日判決言渡
令和3年(ワ)第7609号ボイスレコーダー等開示請求事件
裁判長 加本牧子
裁判官 岩本真吾
裁判官 矢崎達彦

ただし806号法廷前の張り紙では裁判官岩本真吾ではなく、裁判官中井冴子と記されていた

判決主文 
原告の請求をいずれも棄却する
訴訟費用は原告の負担とする
JAL側弁護士不在、JAL側関係者不在のまま、法廷にJAL側の人間が一切現れず、空席のままであった。明らかに不当判決といえる。

判決の理由抜粋
1原告が被告に対して、人格権に基づく開示請求権を有するか

原告側の主張→飛行関連のデータは死に至る直前の個人に関する重要な情報であり、本件事故調査報告書に記載されていない真実の究明に不可欠である。人格権としてのプライバシー権(自己情報コントロール権)によっても保護され、開示請求権が認められるべきである。遺族にとっても敬愛追慕の情に関わる重要な情報である。
被告側の主張→原告の主張する内容は、国や公共団体を律するものであって、私人間(JALは単なる私企業にすぎない)を直接規律するものではないので、JALが持っているものは、保有個人データに該当しない。敬愛追慕の情が法律上保護される場合があっても、遺族固有の権利でそのような開示請求権が認められることはない。


2国内旅客運送約款、運送契約に従って、被告のJALと乗客(吉備雅男)との間に締結した法律関係にもとづき、その付随義務を負っていたJALが安全配慮義務も負っていたため、開示すべきかどうか。
原告の主張→契約当事者間に情報収集力、分析力に格差があるからこそ、運送人は情報提供義務がある。墜落死亡後、それが原告に相続されたのであり、信義則上、情報提供義務を負うべきである。
被告の主張→その義務はあるとしても、生データ開示請求権まではない。JALは事故調査委員会に協力しており、事故調査報告書に記されている通りである。また、原告と被告の和解が成立したところで、それは消滅する。

当裁判所の判断
① 人格権に基づく開示請求権の有無
  本件は、国または地方公共団体の統治行動とは異なり、私人間であって類推適用されるものではない。個人に関する情報の開示請求権については、本件ボイスレコーダー等は、吉備雅男個人の記述や、個人識別符号を含んでるとはいえない。被告の行為によって法的利益が侵害され、違法であるともいえない。また、プライバシー権の保護となる情報は、開示によって個人の私生活の平穏が乱される性質のものであって、ボイスレコーダー等が、原告にとって秘匿性の高い情報ではないし、法的利益を有しているとは認められない。敬愛追慕の情は十分尊重すべきものであるのは、当然否定されるものではないが、そのような事情を考慮しても、原告のプライバシーに係る情報として保護対象になると解するのは困難である。
② 運送契約上の理由
  被告は運送契約に付随する義務として雅男を安全に目的地まで運送する安全配慮義務を負っていたというのはその通りである。しかし、その債務から開示請求権の存在が導かれる根拠は明らかではない。情報開示請求権の存在を基礎付ける趣旨の条項は見当たらない。情報格差については、運輸省航空事故調査委員会を設置して調査を行い、一定の行政上の規定を定めた法規である航空法令にもとづき、本件航空機に装備・記録されたものであって、私人間の司法上のものではない。ただし、損害賠償請求権を有する乗客や遺族が意思決定を迫られる事態が想定され、墜落事故直後に決定しなければならず、そのための情報は必要である。原因の詳細な情報を得たいと願うのは当然である。運送人は乗客又は遺族に対して、信義則上、運送契約に付随する義務として情報提供義務、説明義務を負う。
  しかし、本件では、事故調査委員会の報告書が作成されて公表されている。また被告との間で損害賠償請求権に関して和解をしている。ここで消滅したと認められる。
以上の理由によって判決をする。


補足説明
加本裁判長の、蚊の鳴くような、小さな声は、後ろまで聞こえず、全く意思が入っていない人形のような判決読み上げであった。
キーワードは「和解で消滅」であるが、吉備素子さんとJALとの間でしたという和解の書類を、JAL側弁護士は法廷に一枚もだしてきていない。ただ、新聞記事のみ、しかもそこに吉備素子の名前もないものを出しただけである。その記事一枚を裁判所は認めたことになる。なぜ、正式な和解書の提出をJAL側弁護士に提出するように求めなかったのだろうか。和解の新聞記事だけで書いたこの判決は、あまりにも不自然な判決である。
一体、和解書に、何が書いてあり、何が書いてなかったのか、精査する必要がある。つまり、遺族への提示したものが本物かどうか、実際JALでの保管物が違っている可能性もある。
吉備さんは、墜落原因が異なる場合は和解しなかった、「墜落原因を今後一切追及しない」という文言はなかった、と語る。
JAL側が遺族に渡した紙と、和解条件の書いた正式な書類が異なる場合も十分考えられるため、今後、この和解書をめぐる真相も追究していかなければ、遺族の怒りは収まらない。裁判所の判決は、条文や判例の表層的な部分のみを書いているのであって、完全に国側(国土交通省)とJALの言いなりの不当判決と言えよう。

なお、この裁判の一部始終を詳細にわかりやすく書いた
青山透子著『日航123便墜落事件ーJAL裁判』が、絶賛発売中です。この法廷で繰り広げられていた裁判の表と裏がよくわかります。ぜひお手に取ってお読みください。




 
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